法人税

【2026年税制改正】賃上げ促進税制はどう変わる?中小企業の控除率と5年間の繰越制度

2026年度の税制改正で、中小企業向けの賃上げ促進税制が変わりました。

給与の増加に応じた基本の控除率は維持されます。一方、教育訓練費による上乗せは廃止されました。

適用時期は決算日ではなく、事業年度の開始日で判断します。

今回は、改正内容と計算例、経理担当者が確認すべきポイントを解説します。

1.2026年改正で何が変わった?

賃上げ促進税制は、給与を増やした企業の法人税を軽減する制度です。

青色申告をする中小企業者等が対象です。

今回の改正では、研修費などを増やした場合の「10%上乗せ」がなくなりました。

一方、子育て支援や女性活躍に関する認定による5%上乗せは残ります。

そのため、中小企業向けの最大控除率は45%から35%になりました。

これは成立済みの税制改正です。今後の改正案ではありません。国税庁

2.いつから新しいルールになる?

新ルールは、2026年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。

例えば、3月決算の会社なら2027年3月期からです。

一方、12月決算の会社は2026年12月期が旧ルールです。

2027年12月期から新ルールになります。

中小企業向け制度の対象期間は、2027年3月31日までに開始する事業年度です。

期限は「決算日」ではなく「開始日」で確認しましょう。

3.控除率は何%?計算例で確認

基本の控除率は変わりません。

給与等支給額の増加率によって、次のように決まります。

前年度からの給与増加率税額控除率
1.5%以上15%
2.5%以上30%
2.5%以上+一定の認定要件最大35%

例えば、前期の対象給与が1億円だった会社を考えます。

当期は1億300万円に増えたとします。

増加率は3%、増加額は300万円です。

ほかの調整がなければ、税額控除の計算は次のようになります。

300万円×30%=90万円

ただし、実際に控除できるのは法人税額の20%までです。

仮に法人税額が200万円なら、当期の控除上限は40万円です。国税庁

4.使い切れない控除額はどうなる?

中小企業向けには、未控除額を5年間繰り越す仕組みがあります。

先ほどの例なら、差額の50万円が繰越対象になり得ます。

ただし、自動的に翌期の税金から引かれるわけではありません。

まず、発生年度の申告で所定の明細書を添付します。

さらに、繰り越す各年度にも明細書が必要です。

実際に繰越控除を使う年度には、給与総額が前年度より増えている必要もあります。

そのため、赤字でも申告資料を整えておくことが大切です。中小企業庁

5.経理担当者が今から準備すること

まず、自社の事業年度開始日を確認しましょう。

次に、前期と当期の給与台帳を比べます。

対象にはパートやアルバイトの給与も含まれます。

一方、役員給与や一定の親族への給与は対象外です。

また、資本金1億円以下でも対象外となる場合があります。

例えば、大企業から一定割合以上の出資を受ける会社です。

前3事業年度の平均所得が15億円を超える法人も対象外です。

さらに、助成金などによる調整も必要です。

単純に「人件費の合計」を比べるだけでは不十分です。

最後に、賃上げ額と法人税の見込みを試算します。

税額控除だけでなく、資金繰りも併せて検討しましょう。

まとめ|決算期と給与データを早めに確認

2026年度改正では、教育訓練費の上乗せが廃止されました。

一方、基本控除率と5年間の繰越制度は維持されています。

重要なのは、開始日・給与増加率・申告書類の3点です。

賃上げ促進税制は、給与計画と税務申告の両方に関わります。

決算直前ではなく、今から確認を進めましょう。

参考資料・出典

  1. 国税庁『令和8年度法人税関係法令の改正の概要』(賃上げ促進税制の見直し)
  2. 国税庁『No.5927-2 給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除(中小企業者等における賃上げ促進税制)』
  3. 中小企業庁『賃上げに取り組む経営者の皆様へ~政府は、賃上げに取り組む企業・個人事業主を応援します~』(令和8年度改正後の賃上げ促進税制の概要)
清水 健