税務調査対策

【税理士が解説】クレジットカード明細だけで仕入税額控除はできるのか?

こんにちは。税理士の清水です。
「クレジットカードの明細だけで、消費税の仕入税額控除はできますか?」という質問をよくいただきます。
キャッシュレス化が進む中で、紙の領収書をもらわずに済ませてしまうケースも増えていますが、
実はカード明細だけでは控除が認められないのが原則です。
今回は、その理由と正しい対応方法をわかりやすく解説します。


■ 仕入税額控除の基本とは

事業者が支払った消費税は、売上で預かった消費税から差し引くことができます。
これが「仕入税額控除」と呼ばれる仕組みです。

ただし、控除を受けるためには、法律で定められた書類を保存していることが条件です。

その根拠は、次の条文に明記されています。

消費税法第30条第7項(令和5年10月1日以降適用)

「課税仕入れ等に係る消費税額の控除は、
当該課税仕入れ等につき、適格請求書(又は適格簡易請求書)その他政令で定める書類の保存をしている場合に限る。

つまり、インボイス(適格請求書)の保存が仕入税額控除の前提条件なのです。


■ クレジットカード明細だけでは認められない理由

クレジットカードの利用明細には、支払日・店舗名・金額などが記載されていますが、
インボイスとして求められる情報が不足しています。

欠けている情報内容
登録番号適格請求書発行事業者の登録番号がない
税率・税額消費税率(10%・8%など)や税額が明示されていない
品目の具体性「飲食代」「物品購入」などの表現では取引内容が不明確

このため、カード明細は支払の証拠にはなりますが、
課税仕入れの証拠(インボイス)には該当しません

結果として、カード明細のみの保存では仕入税額控除ができないことになります。


■ 仕入税額控除を受けるために必要な書類

仕入税額控除を認めてもらうためには、
販売者(適格請求書発行事業者)が発行した領収書や請求書を保存しておく必要があります。
これは紙でもPDFでも、メール等の電子データでも構いません。

支払内容保存すべき書類
飲食代店舗発行のインボイス対応レシート
ネット購入登録番号が記載された領収書(PDF・メール)
交通費・宿泊費チケットや領収書
サブスク・定期購入契約内容と登録番号が確認できる請求書

つまり、「クレジットカード明細」+「インボイス(領収書)」をセットで保存するのが基本です。


■ よくある誤解

「カード明細に店名が載っているから、これで十分ですよね?」

こう思われがちですが、店名だけでは「税率」や「発行者の登録番号」が確認できません。
税務調査の際には、これらの情報が確認できないと仕入税額控除を否認される可能性があります。


■ 実務での対応ポイント

  1. インボイス番号付きの領収書・請求書を必ずもらう
    紙・PDF・メールの形式は問いません。
  2. クレジットカード明細も併せて保管する
    支払証拠として経理上は有効です。
  3. 電子データは削除・改ざんができない状態で保存
    電子帳簿保存法の要件に注意が必要です。
  4. 社内で保存ルールを統一する
    出張費・交際費など担当者ごとの管理漏れを防ぎましょう。

■ 関連法令の整理

内容条文番号要旨
仕入税額控除の基本規定消費税法第30条第1項課税仕入れ等に係る消費税額を控除できる
書類保存要件消費税法第30条第7項インボイス等を保存している場合に限る
書類内容の詳細消費税法施行令第49条記載すべき事項(相手先名、金額、税額など)を定義

■ 税理士からのアドバイス

「カード払いだから領収書はいらない」と思ってしまう方は要注意です。
インボイス制度下では、インボイス番号付き領収書や請求書の保存が控除の前提です。

小さな経費でも、積み重なれば大きな金額になります。
今のうちに、社内で経費精算とインボイス保存のルールを明確化しておきましょう。


関連リンク

国税庁 質疑応答事例
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/18/05.htm

清水 健