Categories: 法人税

固定資産の取得に要する付随費用の経理処理を教えてください。

固定資産を取得するために要した付随費用について、資産にすべきか費用(損金)にすべきか迷うところです。

付随費用には、購入に要した費用、事業の用に供する費用、購入前後の費用や税金などが含まれます。

今回は、いくつかの項目を分けて、各種付随費用の処理をどうしたらいいかまとめていきます。

固定資産の取得価額に含めるもの

資産の購入代価(購入費用を含む)
その資産を事業の用に供するための費用

①購入費用には引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税などの購入のための諸費用を含みます。

②事業の用に供するための費用には機械の据え付け費、試運転費やソフトウェアなどの設定費などが含まれます。

事業の用に供するとは、固定資産のもつ属性に従って本来の目的のために使用を開始するということです。機械であれば、搬入しただけではだめで、据え付け、試運転をし、製品等の生産を開始できるようにすることです。

固定資産の取得価額に含めなくてもいいもの

付随費用の中には固定資産の取得価額に含めなくてもいいとされているものもあります。

税金関係
・不動産取得税又は自動車取得税
・新増設に係る事業所税
・登録免許税その他登記又は登録のために要する費用
建物の建設等のために行った調査、測量、設計、基礎工事等で、その計画変更により不要となったもの
取得の契約を解除して他の資産を取得するときの違約金
取得のための借入金利息で使用開始前の部分
割賦契約の利息部分(明確に区分されている場合に限る)

(引用:国税庁HP№5400

これらの費用は、取得するために直接かかったものではないという判断です。

間違いやすい事例

間違いやすい事例として3つ上げておきます。

未経過固定資産税の取り扱い

契約書で売買日以後は買主が負担することが多い未経過の固定資産税、

税務では売買代金の一部を構成すると考えられています。

税金だからといって租税公課としないように注意が必要です。

なぜか、これは固定資産税はその年の1月1日現在保有している人が負担すべきものだからです。

買主は負担すべき理由がないのに払うことは利益の調整(売買代金の一部)と考えます。

(会計処理:購入側)

内訳勘定科目
建物の固定資産税相当額建物
土地の固定資産税相当額土地

次に、

消費税の取り扱いはどうなるかを見ておきます。

(売主が個人(事業者ではない)の場合)

内訳消費税の処理
建物の固定資産税相当額対象外
土地の固定資産税相当額対象外

売主が個人(事業者ではない)の場合は消費税はかかりません。個人事業者で事業用資産の売買は消費税がかかります、法人の場合を参照してください。

(売主が法人の場合)

内訳消費税の処理
建物の固定資産税相当額課税
土地の固定資産税相当額非課税

土地部分には消費税はかかりません。建物部分は消費税がかかります。

よって建物部分の未経過固定資産税相当額の精算金は税込金額として処理します。

(参照:国税庁HP質疑応答事例

中身は固定資産税なのに、なんで資産に??という感覚が普通だと思います。こう決まっているから仕方ないことでご理解ください。

②土地、建物等の取得に際して支払う立退料等

土地、建物等の取得に際し、当該土地、建物等の使用者等に支払う立退料その他立退きのために要した金額は、当該土地、建物等の取得価額に算入します。

(引用:法人税基本通達7-3-5)

立ち退き料は購入費用とみられます。取得のために絶対必要だった費用ということですね。

③土地とともに取得した建物等の取壊費等

建物等の存する土地(借地権を含む。以下7-3-6において同じ。)を建物等とともに取得した場合又は自己の有する土地の上に存する借地人の建物等を取得した場合において、その取得後おおむね1年以内に当該建物等の取壊しに着手する等、当初からその建物等を取り壊して土地を利用する目的であることが明らかであると認められるときは、当該建物等の取壊しの時における帳簿価額及び取壊費用の合計額(廃材等の処分によって得た金額がある場合は、当該金額を控除した金額)は、当該土地の取得価額に算入する

(引用:法人税基本通達7-3-6)

この規定はよく実務で使います。最初から土地目的の取得した建物及び取り壊し費は全て土地勘定で処理してください、というものです。

制度の趣旨をよく理解して、特に取り壊し費を費用として処理しないよう注意しましょう

この場合、税抜経理を採用している会社は、建物と取り壊し費に含まれる消費税は「仮払消費税」として処理できます。税抜金額相当額だけが土地勘定として処理されます。ご注意を。

まとめ

固定資産の取得価額は購入代価+購入費用+事業の用に供するための費用です。

付随費用の中には取得価額に含めないでいいものもあります。

間違いやすい例として「未経過固定資産税」、「立ち退き料」、「取り壊し費用等」を上げました。

特に、未経過固定資産税では土地、建物で消費税の取り扱いがどう変わるかも見ておきました。

清水 健

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