社会通念上相当と認められるものは、経費に認められます。
社会通念上相当という言葉は税法ではしばしば出てきます。一般的にはとか、常識的には、といった意味で考えてください。
要するに、常識の範囲内で認められるということです。何ともあいまいな感じです。
しかし、その中でいくつか弔慰金の取扱いがありますので見ていきましょう。
弔慰金は、死者を弔うとともに遺族を慰める趣旨で支出され主に金銭をいいます。香典はお通夜や葬儀式の場で渡すことが多いですが、弔慰金は一定期間経過後に支給されるため、香典とは性格が異なります。
また、死亡退職にともなう退職金は労務の対価であり、弔慰金とは性格がこれも異なります。
ただし、税法上は弔慰金が死亡退職金の一部とみなす場合もあり、支出側の思いと税法の扱いが違ってくるケースもあるので注意が必要です。
弔慰金を受け取ったとき、通常相続税の対象になることはありません。
しかし
1、雇い主から弔慰金の名目で受け取った金銭などのうち、実質上退職手当金に該当すると認められた部分は相続税の対象です。
2、1の部分以外の部分について、次に掲げる金額を弔慰金とし、その金額を超える部分を退職金として相続税の対象になります。
死亡の状況 | 弔慰金の範囲 |
---|---|
業務上の死亡 | 死亡当時の給与の3年分 |
業務外での死亡 | 死亡当時の給与の半年分 |
(引用:相続税基本通達3-20)
実務ではこの通達を目安にして弔慰金の支出額の参考にしています。
法人又は個人からの弔慰金で社会通念上相当と認められるものは、所得税及び贈与税がかからないことになっています。(所得税基本通達9-23 、相続税基本通達21の3-9)
社会通念上相当と認められる範囲について、国税庁の照会要旨というところに記事が出ています。
要するに、上の表にある例えば、業務上の死亡なら3年分という取り扱いの範囲内なら社会通念上相当である問い具合に記載されています。
よって、ますます相続税基本通達3-20が実務として利用されます。
法人税法上、弔慰金について適正額がいくらかを明示している通達はありません。
しかし、相続税や所得税の取り扱いから、社会通念上相当な金額については、相続税の範囲から除かれたり、所得税で非課税になったりすることから相続税基本通達3-20の範囲内であれば経費処理できると考えます。
死亡の直前の給料30万円
①業務上での死亡の場合 30万円×12か月×3年=1,080万円
②業務外での死亡の場合 30万×6ヵ月=180万円
もし、これらの金額を超えて支給した場合
超えた金額が退職金として扱います。
②のケースで、弔慰金を300万円支給した場合
300万円-180万円=120万円が退職金として扱われます。
注意すべき点ですが、
①弔慰金規定を作っておく
②役員と従業員の支給額のバランスを考えておく
ということです。
弔慰金の規定がないと、実質退職金とみなされる可能性があります。
同時に退職金規定も作っておくべきでしょう。
法人税の場合、規定に基づいて支出しているかどうかがよく問われます。
弔慰金規定が社会通念上相当な範囲で支給する内容になっており、規定通りに遺族に支給されておれば経費処理は問題ありません。
同時に退職金も規定通りに支給されておればなお問題ありません。
弔慰金は会社の経費になる。
ただし金額は社会通念上相当な額までである。
業務上での死亡は給料の3年分、業務外では6ヵ月分である。
規定は必ず作り、規定に基づき支給することが必要である。
弔慰金と退職金をきっちり区別することが大切です。
もらう側は弔慰金は非課税です。退職金は相続財産に含まれます。
会社は良かれと思って支出した弔慰金が、退職金だと言われたら、会社の思いが遺族に十分伝わりません。
弔慰金の制度を整えるのは会社です。
規則を理解し、制度を事前に整えておけば備えることができます。
備えあれば憂いなしですね。
今日も最後まで読んでいただきありがとうございます。