法人が役員に支給する退職金で適正な額のものは損金に算入されます。
役員退職金に関する法人税のポイントは損金算入の時期と適正な額がいくらかということです。
又、所得税上でのポイントは在任期間により注意しないと税金が多くかかります。
役員退職金についてはポイントが盛り沢山なので、今回は損金算入時期に関することと源泉税に関することに絞ります。
それでは順に見ていきましょう。
原則の取扱い | 株主総会の決議等によって退職金の額が具体的に確定した日の属する事業年度となります。 |
例外の取扱い | 法人が退職金を実際に支払った事業年度において、損金経理をした場合は、その支払った事業年度において損金の額に算入することも認められます。 |
例)6月決算の会社 6月末に取締役退任
株主総会 6月30日
退職金支給日 7月1日
(採ることができる経理処理)
6月30日 役員退職金 / 未払金
OR
7月1日 役員退職金 / 現預金
役員退職金は、会社法上の報酬に含まれ、支給する場合、定款に記載がない場合は株主総会の決議を要します。(会社法361条1項)
税金の取扱いは株主総会決議を重要視しています。総会決議を開催した実績を証明するものは「議事録」です。
議事録は必ず作成しておきましょう。
役員退職金は退職金をもらうとき、退職控除後の退職所得を元に源泉税を計算して引かれます。
(退職金ー勤続年数に応じた退職所得控除)×1/2=退職所得
退職金の税金は退職所得×総合課税の所得税率で計算します。
これは一般の従業員の方の計算も同じです。
役員には特別な規定があります。
役員として勤続年数が5年以下の者が退職金をもらうときは×1/2の措置がありません。
よって、源泉税は通常より倍、所得額によってはもっと変わってきます。
勤続年数の考え方は、1年未満の端数は切り上げて1年と数えます。
税金の実務で役員に関する規則は細かく、政策的です。
5年の在任期間の規定は、天下りなどで短い在任期間で多額の退職金をもらう人はけしからん、という世論を背景に作られたものです。
役員退職金の論点は他に、適切な額はいくらか、打ち切り支給する場合などあり又別の機会で解説したいと思います。
議事録は必ず作りましょう。
会社は会社法で規制されています。税法の取扱いも会社法の規定を前提として運用されています。
役員退職金を未払い計上しようとしたとき、総会決議がないとできません。
総会決議をしたと言っても議事録がないとしたととは認められません。
今回だけでなく、税務の取扱いで総会決議や取締役会の必要なものは必ず議事録を作りましょう。
会社の大小、株主と社長が同じ会社でも議事録は必要です。
逆に言えば議事録があれば「安心」です。
今日も最後まで読んでいただきありがとうございます。
(参考URL)国税庁タックスアンサーNo.5208 役員の退職金の損金算入時期、No.2737 役員等の勤続年数が5年以下の者に対する退職手当等