✔ 役員賞与は損金にできないはずですが?
法人税では役員賞与は原則損金にできません。
つまり、役員賞与で決算上費用で処理しても、申告書で利益扱いの処理をします。
よって、結果、税金計算上は役員賞与の金額相当にも税金がかかっています。
では、どのような手続きをとれば損金処理できるかを解説します。
役員賞与を損金として処理するためには、
一定の要件を満たした届出書を税務署に提出すれば損金処理が認められます。
この届出書を「事前確定届出給与書に関する届出書」といいます。
まずは、提出する届出書の様式を確認しておきましょう。
国税庁が公表している様式はこちら>>>「事前確定給与に関する届出書」
同じく付表として一緒に提出する様式はこちら>>>付表1(事前確定届出給与(金銭交付用))、付表2(事前確定届出給与(株式交付用))
事前確定届出給与に関する届出書を提出することは分かりました。
では、要件についてです。
実は、届出書どおりに役員賞与を支給することが要件です。
届出書どおりに役員賞与を支給すると損金として処理できます。
「事前確定届出給与に関する届出書」の記載上の注意点は届出期間と正確な記載の2つです。
役員賞与の金額は通常株主総会で決めます。
届出書の提出期限は次の2つの日のいずれか早い方の日と決まっています。
① 事前確定届出給与の決議をした日から1ヵ月を経過した日
② 決算日から4ヵ月を経過した日
大体、決算株主総会で決めますので、法人税の申告期限(通常決算日の2ヵ月後)を考慮すると、
①の日は決算日の3ヵ月後ぐらいになります。
よって、①の期限が採用されるのが多いと思います。
✔ 記載方法について教えてください。
記載事項はもれなく正確に記載する必要があります。
番号 | 記載項目 | 記載内容 |
---|---|---|
① | 支給を決議したと決議機関 | 決議年月日と決議機関 |
② | 事前確定届出給与に係る職務執行開始日 | 開始年月日 |
③ | 臨時改定事由の概要他 | 当初の届出には関係なし |
④ | 事前確定届出給与等の概要 | 作成した付表の記載 |
⑤ | 定期同額給与としない理由 | 理由を記載する |
⑥ | 届出期限 (イ)または(ロ)のいずれか早い日 | (イ)①と②のいずれか早い日から1ヵ月経過した日 または (ロ)会計期間4カ月経過した日 |
⑤の定期同額給与としない理由の例(実際に使用している例)
業績が不安定なため定期同額給与とするよりも利益が出た結果として支給する方が合理的である。また、支給日は社内の一体感を高めるため、従業員と同じ日にしている。業績が不安定なため定期同額給与とするよりも利益が出た結果として支給する方が合理的である。
⑥の届出期限について
・新設法人の場合は設立日から2ヵ月以内が期限になります。
付表1は金銭で役員賞与を支給する役員毎に作成します。
重要な記載事項は以下のようになります。
番号 | 記載項目 | 記載内容 |
---|---|---|
① | 支給対象者 | 役員の氏名(役職名) |
② | 職務開始日と職務期間 | (例)総会日の日から1年間など |
③ | 支給時期 | 支給予定の年月日 |
④ | 支給金額 | 円単位 |
③と④について、支給時期が2回であればそれぞれの日毎に記載します。
なお、付表2はレアと思われますので省略します。
✔ ほかに注意することはないですか?
例えば、事前の届出では役員賞与100万円支給するはずが、60万円しか支給しなかった場合、
60万円は損金になりません。
結局ゼロか100かということです。
また、3月30日に100万円支給する予定のものが、失念して翌日31日に支給した場合も100万円は損金になりません。
以上、支給額と支給日は届出と乖離したらアウトと思っていてください。
なお法人税はアウトで損金にできなくても、所得税は普通にかかりますのでこの点も理解しておいてください。
役員賞与は原則損金にできませんが、事前確定届出給与に関する届出をすると損金処理できること方法をみていきました。
しかし、本来は損金にできないので、事前の届出や実際の支給はとても厳格に行われます。
こんなややこしい役員賞与はやめて、毎月の報酬(定期同額給与)に上乗せする道を選ぶこともできます。
さて、事前届出をして、役員賞与を支給することにしますか?
私なら、やっぱり税理士に相談してから決めることにします。
あなたはいかがでしょうか。。