「決算まであと1か月しかないけれど、今からできる節税はありますか?」
決算が近づくと、このようなご相談をいただくことが多くなります。
結論からいうと、決算1か月前でも検討できる節税対策はいくつかあります。
ただし、節税のためだけに不要なものを購入してしまっては、会社の資金が減ってしまいます。大切なのは、今後必要となる支出や設備投資などを確認しながら、会社にとって有効な対策を選択することです。
今回は、決算前に確認しておきたい代表的な節税対策をご紹介します。
近いうちに購入する予定のパソコン、プリンター、事務機器、工具などがある場合には、決算前に購入することを検討してみましょう。
一定の中小企業者等については、一定金額未満の減価償却資産を取得し、決算日までに事業で使用を開始した場合、一定の要件のもとで取得価額をその年度の経費として処理できる特例があります。
令和8年度税制改正では、この特例の対象となる取得価額の基準が従来の「30万円未満」から「40万円未満」に引き上げられ、適用期限も延長されています。
ここで重要なのは、購入しただけではなく、原則として決算日までに事業の用に供していることです。
例えば、決算日前日にパソコンを購入しても、箱に入れたままで実際に使用していない場合には注意が必要です。
節税目的で不要なものを買うのではなく、「来期に買う予定だった必要な設備を少し前倒しする」という考え方がおすすめです。
事務所や店舗、工場、機械設備などに修理が必要な箇所がある場合は、決算前に修繕することも検討できます。
通常の維持管理や原状回復を目的とした修繕費については、一定の場合、その事業年度の損金として処理することができます。
例えば、
・壊れた設備の修理
・壁紙や床などの補修
・機械の部品交換
・店舗設備のメンテナンス
などが考えられます。
ただし、単なる修理ではなく、資産の価値を高めたり、使用可能期間を延長したりする工事については「資本的支出」となり、一度に全額を経費にできない場合があります。
「修繕費になるのか、固定資産になるのか」は内容によって判断が異なるため、金額の大きな工事については事前に確認しておきましょう。
業績が良かった年度については、従業員に決算賞与を支給する方法もあります。
決算日までに実際に支給する場合はもちろん、一定の要件を満たせば、決算後に支給する賞与でも当期の損金として処理できるケースがあります。
例えば、未払いの決算賞与を当期の損金とするためには、原則として、
・各従業員に支給額を通知している
・決算日の翌日から1か月以内に支給する
・当期に損金経理している
などの要件を満たす必要があります。
「利益が出たから賞与を出す」というだけでなく、従業員への利益還元やモチベーション向上につながる点もメリットです。
なお、役員に対する賞与は従業員賞与とは税務上のルールが異なるため、注意が必要です。
家賃や保険料、リース料、各種サービス利用料など、継続的に支払っている費用については、「短期前払費用」の特例を利用できる場合があります。
通常、翌期分の費用を先に支払った場合は「前払費用」として資産計上します。
一方、一定の契約に基づく継続的なサービスについて、支払日から1年以内にサービスを受ける費用を前払いし、一定の要件を満たして継続的に同じ処理を行う場合には、支払った年度の損金として処理することが認められています。
例えば、月払いしているサービスを年払い契約に変更するケースなどが考えられます。
ただし、「今年は利益が出たから今回だけ1年分前払いする」といった利益調整を目的とした処理では、適用が認められない可能性があります。
契約内容や支払方法を変更する前に、税理士へ確認することをおすすめします。
一定の中小企業であれば、「経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)」を活用できる場合があります。
経営セーフティ共済は、取引先が倒産した際の資金繰りを支援する制度ですが、法人が支払った掛金は、一定の要件のもとで損金に算入できます。
掛金月額は5,000円から20万円まで設定でき、掛金総額800万円まで積み立てることができます。また、1年以内の前納掛金についても一定の要件のもとで支払った事業年度の損金とすることができます。
ただし、節税だけを目的として加入するのではなく、将来解約した際の課税や資金繰りまで考えて判断することが重要です。
また、令和6年10月1日以降に共済契約を解約し、その後再加入した場合には、解約日から2年間は掛金を損金算入できない取り扱いが設けられています。
決算前には売掛金や貸付金などの債権も確認しておきましょう。
長期間回収できていない売掛金の中に、取引先の倒産などにより回収不能となっているものがあれば、一定の要件を満たすことで「貸倒損失」として損金処理できる場合があります。
ただし、「回収が遅れているから」という理由だけで貸倒損失にできるわけではありません。
相手先の状況や取引経緯、債権放棄の手続きなどによって税務上の取り扱いが変わるため、決算前に一度整理しておくことが大切です。
決算直前になると、「少しでも税金を減らしたい」と考える方は多いと思います。
しかし、100万円を使って経費を増やしたとしても、税金が100万円減るわけではありません。手元からは100万円の資金が出ていきます。
そのため、節税を考える際には、
「本当に会社に必要な支出なのか」
「節税後にどれくらい現預金が残るのか」
「来期以降の資金繰りに問題はないか」
まで含めて判断することが重要です。
決算1か月前であれば、まだ検討できる対策はあります。
一方で、決算日を過ぎてしまうと利用できなくなる対策も少なくありません。
当事務所では、決算前に会社の利益予測と納税額を確認したうえで、それぞれの会社に適した決算対策・節税対策をご提案しています。
「今期は利益が出そうだけれど、何をしたらよいかわからない」
「決算前に一度、納税額を確認しておきたい」
という経営者の方は、ぜひお早めにご相談ください。
※本記事は一般的な法人の税務上の取り扱いを解説したものです。会社の規模、資本金、事業年度、契約内容等によって適用できる制度や税務上の取り扱いは異なります。実際に対策を行う際は、税理士等の専門家にご確認ください。