税理士法人 清水会計

決算賞与を活用した法人税の節税術

決算賞与
法人が使用人に対して支給する賞与の額は、次に掲げる賞与の区分に応じ、それぞれ次の事業年度の損金の額に算入します。
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    今回は「決算賞与を活用した法人税の節税方法」について、企業の経営者や経理担当者向けに分かりやすく解説します。


    決算賞与とは?

    「決算賞与」とは、会社の決算時に、役員ではなく従業員に対して支給される臨時の賞与のことを指します。通常の賞与とは別に、決算直前に損金算入することで法人税を節税する目的で利用されます。


    決算賞与による節税のポイント

    決算賞与は、次の3つの要件をすべて満たせば、未払いであっても損金算入することが認められています(法人税法施行令第72条の2)。

    ✅ 要件①:支給額の明確な決定

    決算賞与の支給額を、決算日までに「誰に」「いくら支給するか」明確に決定し、社内でその内容を文書で残す必要があります。たとえば取締役会議事録や賞与支給決議書などの形で証拠を残しておくことが重要です。

    ✅ 要件②:通知の実施

    従業員に対して、決算日までに支給額を通知していること。書面で通知するのが望ましく、メールや社内通知でも対応可能です。

    ✅ 要件③:決算後1ヶ月以内に支給

    実際の支給は、決算日から1ヶ月以内に行う必要があります。たとえば、3月31日決算であれば、4月30日までに支給しなければなりません。


    節税効果の具体例

    たとえば、3月決算の会社で、利益が1,000万円出そうな場合、従業員に対して決算賞与として300万円を支給すると、利益が700万円に圧縮され、法人税の課税所得が減少します。

    内容金額
    利益(決算前)1,000万円
    決算賞与(損金算入)△300万円
    課税所得700万円
    法人税等(概算30%)約210万円
    ※節税効果(比較)約90万円減税

    注意点とリスク

    • 支給額があいまいな場合、損金不算入となり否認される可能性があります。
    • 社会保険料・源泉所得税などのキャッシュアウトにも注意
    • 役員賞与は損金算入できません(定期同額給与等の規定あり)。

    決算賞与を活用するタイミングと実務の流れ

    1. 決算前の利益予測
    2. 節税額とキャッシュフローの試算
    3. 支給対象者・金額の決定
    4. 社内で支給決議書の作成・保管
    5. 従業員への支給額通知(書面がベスト)
    6. 決算後1ヶ月以内に実際の支給

    まとめ

    決算賞与は、適切に実施すれば法人税の節税につながる有効な手段です。また従業員満足度も上がる効果的な手段です。ただし、税務上の要件を外すと損金算入できないため、実務は慎重に進める必要があります。資金繰りとのバランスも考慮し、顧問税理士と相談のうえ導入されることをおすすめします。

    【関連URL タックスアンサー№5350】

    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5350.htm

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