法人税は損益計算書の利益に税率を掛けて算出するように思われがちですが、実はそうではありません。会社では費用として処理したのに、税金計算の時には費用にならないケースがあるのです。会社(法人)の経営者ならだれもが気になる法人税、どのように計算されるのか知っていて損はありません。ここでは法人税の計算の仕組みをできるだけ簡単に解説します。
法人税の計算の仕組み
法人税額は、「所得×税率」で計算します。
利益×税率ではありません。ここが最も混乱するところです。
利益と所得の違い
〇利益は収益ー費用で計算します。
会社の決算書で表示されている会社のもうけを表示しているのは利益です。経常利益や税引前利益、当期純利益などです。
〇所得は益金ー損金で計算します。
益金、損金は税金計算上の文言です。収益≒益金、費用≒損金です。
収益と益金、費用と損金の差額を利益から差し引きすることを申告調整といいます。
所得=利益±申告調整項目(金額)で計算します。
法人税の税率
一般的な会社の税率(平成31年4月1日以後から始まる事業年度)は以下のようになっています。
①資本金1億円以下の法人(注)
所得金額 | 税率 |
---|---|
年800万円以下の部分 | 15% |
年800万円超の部分 | 23.2% |
(注)資本金が5億円以上の大会社の100%子会社や100%グループ内の大会社に株式を保有されている会社などを除く
②上記以外の法人
税率 |
---|
23.2% |
①、②を見ると、中小企業は税率が優遇されているのが分かります。
益金、損金とならないものの具体例
益金と収益、費用と損金は必ずしも一致しません。具体例を挙げてみます。
①収益ではあるが益金にならないもの
・受取配当金(但し100%子会社からのものに限る)
株式の配当金ですが、決算書では受取配当金として収益計上しますが、税金計算をするときは益金としません。これを益金不算入といい、法人税の申告書を作成するときに減算します。減算とは利益からマイナスの調整をするという意味です。
②費用ではあるが損金にならないもの
・役員賞与
役員賞与は決算書では費用計上しますが、損金としません。これを損金不算入といい、法人税の申告書を作成するときに加算します。加算とは利益にプラスの調整するという意味です。
簡単な計算例
(前提)大会社 税率23.2%を使用
税引前利益 10,000円
(加算)役員賞与 2,000円
(減算)受取配当金 1,000円
差引:所得金額 11,000円
法人税額は、11,000円×23.2%=2,552円となります。
法人税の計算が決算書上の税引前利益に税率を掛けて計算するのではなく、所得金額に税率を掛けて計算することを理解してただけたと思います。
まとめ
法人税の計算は利益ではなく所得に税率を掛けることを解説しました。登場した言葉、益金、損金、加算、減算は税金計算のための特有の言葉です。言葉の意味が理解できたら法人税計算のイメージはできています。実務ではどういったものが益金算入か損金不算入かがポイントになります。
また、計算例では出ていない項目として、所得からさらに差し引く(控除できる)ものがあったり、計算した税額から差し引く(控除できる)ものがあったりとまだまだ奥が深いものがあります。
まずは法人税の計算の基本的なイメージを付けていただけたらと思います。
(参考URL)国税庁タックスアンサー№5759 法人税の税率