海外子会社や海外支店がある場合、日本から社員が出向や転勤をすることがあります。
初めて出向で行く人は、「税金はどうなるんだろう?」とか「税金はかからないんでしょう?」とか思っている人もいらっしゃるでしょう。
また、経理担当者で不慣れな方は、「実際のところ何に気をつかたらいいの?」と不安だと思います。
今回は、そういう方々のために年の途中で「非居住者」になった人の出国する前と後での所得税(源泉税)について解説します。
さらに個人住民税についても深掘りしてみていきたいと思います。
目次
居住者と非居住者について
社員が海外支店に転勤するなどの場合、1年以上の予定で転勤した場合、所得税法では「非居住者」となり、1年未満の予定であれば「居住者」となります。
居住者か非居住者かの判断は「出向契約書」などによって出国の時点で決まります。例えば、出向契約書で出向期間が1年以上であれば「非居住者」となります。
非居住者として出国する前にすること
ずばり、年末調整をしなければなりません。
会社は出国する日までに年末調整をしなければなりません。年末ではありませんが、年末調整です。
その年中の給与支給額が2,000万円以下の人が対象です。
社会保険料や生命保険料は出国する日までの分だけが控除対象です。
扶養控除や配偶者控除もできますが、出国時の現況で生計を一にしているか判断して、所得は1年間の収入を見積もって、適用できるかを判断します。
非居住者として出国した後の扱いについて
居住者 | 非居住者 | |
国内源泉所得 | 〇 | 〇 |
国外源泉所得 | 〇 | × |
〇は所得税がかかるという意味です。×は所得税がかからないという意味です。
国内源泉所得とは日本国内で働いて得た収入等です。国外源泉所得とは海外で働いて得た収入等です。
居住者は全世界所得が日本の所得税の対象になります。
ここでポイントですが、出国する人が役員か従業員かで扱いが異なります。
出国する人が従業員の場合
例えば、海外支店勤務で海外支店から30万円と日本本社から10万円の両方から給料が支給された場合どうなるかです。
上の表で当てはめてみますと、非居住者で海外支店勤務で得た収入ですから全額40万円が国外源泉所得になります。
よって所得税はかかりません。
出国する人が役員の場合
例えば、海外子会社へ出向した役員が、海外子会社から50万円、日本本社から100万円の合計150万円の役員報酬がある場合どうなるかです。
従業員の場合では、100万円が国外源泉所得となって非課税でした。
しかし、役員の場合、特別な決まりがあり、国内で支給する役員報酬は勤務地にかかわらず国内源泉所得とするということです。役員の場合、海外にずっといると言い切れないからだと思います。
よって100万円は国内源泉所得とみなされ、非居住者の源泉税率20.42%を源泉徴収されます。
ちなみに税率は一定で、確定申告をする必要はありません。
海外支店長の場合
役員が海外支店の支店長として赴任する場合、常勤で実質従業員と変わらない場合は国内源泉所得とみないというものです。
非居住者期間中に国内で仕事をした場合
非居住者であっても、日本国内で働いた分は国内源泉所得となります。日本への出張期間をカウントして、国内と海外を区分する必要があります。
国内源泉所得とみなされた額に20.42%の源泉税がかかります。
個人住民税の扱いはどうすべきか
個人住民税で出国前にしておくこと
個人住民税は前年の所得に基づいて算定され、給与所得者は給与から天引きする形で毎月納税されています。
この場合、毎月の給与が国内から出ている場合はそのまま天引きを続けます。
もし、国内の給与がなくなる場合は、最後の給与から残りの額を一括して天引きして納めることになります。
自分で納めたり、納税が完了していない人は出国することによって、納税ができませんので、「納税管理人」を選任する必要があります。
納税管理人は自分の代わりに納税の手続きなどをしてくれる人です。出国前に届出をしておく必要があります。
出国日と個人住民税の関係
個人住民税は毎年1月1日現在日本に住所がある人に課税されます。
よって、12月31日までに出向した人は今年の収入について、来年度に個人住民税が課されることはありません。
まとめ
出国して非居住者になる場合、大方の人は年末調整をしなくてはなりません。
出国後は本社で役員か従業員かで、日本からの報酬給与が源泉税の対象になるかどうかが分かれます。
非居住者の国内源泉税率は20.42%です。源泉税を納付して課税関係は終了です。
個人住民税も納めておく必要がありますので残額を一括して納めたり、手続きをしておてください。
海外へ出国する場合についてまとめましたが、より詳しい規定を知りたい方は(参照先 国税庁№2517)を見てください。