税理士法人 清水会計

経営力向上設備の即時償却と税額控除を徹底解説!

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    「設備投資をしたいけれど、資金繰りが…」「もっと効率的に利益を出したい!」そんなお悩みを抱える中小企業の経営者様、個人事業主様に朗報です。**「中小企業経営強化税制」**を活用すれば、新たな設備投資にかかる税負担を大きく軽減できる可能性があります。

    このブログでは、経営力向上設備にかかる「即時償却」と「税額控除」という2つの税制優遇について、その内容、メリット・デメリット、そして適用要件まで、わかりやすく解説します。

    中小企業経営強化税制とは?

    中小企業経営強化税制は、中小企業が「経営力向上計画」に基づき、生産性向上や収益力強化に資する特定の設備を導入した場合に、税制上の優遇措置を受けられる制度です。これにより、設備投資を促進し、企業の経営力強化を後押しすることを目的としています。

    この制度では、主に以下の2つの優遇措置のいずれかを選択適用することができます。重複適用はできません。

    • 即時償却(特別償却100%)
    • 税額控除

    1. 即時償却(特別償却100%)とは?

    即時償却とは、通常、設備の耐用年数に応じて費用計上(減価償却)する金額を、取得した事業年度にその全額を費用として計上できる制度です。

    メリット:

    • 初年度の節税効果が高い: 設備取得費の全額をその年の経費にできるため、課税所得を大幅に圧縮し、初年度の法人税(または所得税)の負担を大きく軽減できます。
    • キャッシュフローの改善: 納税額が減ることで、手元に残るキャッシュが増え、その資金を新たな投資や事業拡大に回すことができます。
    • 利益が多い年に効果絶大: 特に利益が大きく出た年に設備投資と合わせて活用することで、高い節税効果を享受できます。

    デメリット:

    • 翌年度以降の節税効果はなし: 初年度に全額償却するため、翌年度以降は減価償却費を計上できなくなり、長期的な節税効果は期待できません。
    • トータルの納税額は変わらない: 税金が減るのではなく、あくまで「前倒しで経費計上する」ため、最終的に支払う税金の総額は通常の減価償却と変わりません。

    具体例:

    1,000万円の設備を導入し、即時償却を選択した場合、その年度の課税所得から1,000万円が減額されます。これにより、本来支払うべき法人税が大幅に抑えられます。

    2. 税額控除とは?

    税額控除とは、設備取得費の一定割合を法人税額(または所得税額)から直接差し引くことができる制度です。

    • 資本金3,000万円以下の法人・個人事業主: 取得価額の**10%**を税額控除
    • 資本金3,000万円超1億円以下の法人: 取得価額の**7%**を税額控除

    メリット:

    • 直接的な納税額の軽減: 法人税額そのものから控除されるため、実質的な納税額を減らすことができます。
    • 通常の減価償却との併用: 税額控除を適用した上で、通常の減価償却も行えるため、長期的に節税効果を享受できます。
    • 利益が少ない年でも効果あり: 即時償却のように「利益を圧縮する」わけではないため、利益が少ない年でも一定の節税効果が見込めます(ただし、法人税額が少ない場合は控除しきれない可能性もあります)。
    • 控除額の繰り越し: 控除額が法人税額の20%を超える場合、超過分は翌年に繰り越すことができます。

    デメリット:

    • 初年度の節税効果は即時償却に劣る: 即時償却に比べ、初年度に得られる節税効果は限定的です。
    • 法人税額が少ないと恩恵が少ない: そもそも法人税額が少ない場合、控除できる金額も少なくなり、メリットを最大限に享受できない可能性があります。

    具体例:

    1,000万円の設備を導入し、税額控除(10%)を選択した場合、法人税額から100万円(1,000万円 × 10%)が直接差し引かれます。

    どちらを選ぶべき?

    即時償却と税額控除のどちらを選択すべきかは、企業の状況によって異なります。

    • 当期の利益が大きく、初年度にまとまった節税効果を得たい場合: 即時償却が有利です。
    • 今後も安定的に利益が見込め、長期的に節税効果を享受したい場合: 税額控除が有利です。
    • 法人税額が少ない場合: 税額控除では十分な恩恵を受けられない可能性があるため、慎重な検討が必要です。

    税理士や税務の専門家と相談し、ご自身の会社の状況に合わせた最適な選択をすることをお勧めします。

    適用要件

    中小企業経営強化税制を適用するためには、いくつかの要件を満たす必要があります。

    1. 中小企業者等であること:

    • 資本金または出資金が1億円以下の法人
    • 資本または出資を有しない法人のうち、常時使用する従業員数が1,000人以下の法人
    • 常時使用する従業員数が1,000人以下の個人事業主
    • 協同組合等

    2. 経営力向上計画の認定を受けること:

    • 人材育成、コスト管理、設備投資など、自社の経営力を向上させるための計画を策定し、主務大臣(事業分野によって異なります)の認定を受ける必要があります。
    • 決算期末までに認定を受けておく必要があります。認定まで約1か月程度かかりますので、余裕をもって届出をする必要があります。

    3. 対象設備を新規取得等すること:

    対象となる設備は、主に以下のいずれかの類型に該当するものです。

    • A類型:生産性向上設備
      • 生産性が旧モデル比で平均1%以上向上する設備
      • 一定期間内に販売されたモデルであること
      • 機械装置: 1台または1基の取得価額が160万円以上
      • 工具、器具及び備品: 1台または1基の取得価額が30万円以上
      • 建物附属設備: 一の取得価額が60万円以上
      • ソフトウェア: 取得価額が70万円以上
    • B類型:収益力強化設備
      • 投資利益率が年平均7%以上の投資計画に係る設備
    • D類型:経営資源集約化に資する設備
      • 修正ROAまたは有形固定資産回転率が一定割合以上の投資計画に係る設備

    4. 指定事業の用に供すること:

    • 取得した設備を実際に事業に使用すること。

    5. 適用期間内に取得すること:

    • 中小企業経営強化税制の適用期間は、2025年4月1日から2027年3月31日まで延長されています。 ただし、税制改正に伴い、対象設備の要件や手続きが一部変更される可能性がありますので、常に最新の情報を確認するようにしましょう。特に、デジタル化設備(C類型)は2025年4月以降対象外となる点に注意が必要です。

    手続きの流れ(A類型の場合の例)

    • 設備選定・メーカーからの証明書取得: 導入したい設備が本制度の対象となるか、メーカーに確認し、証明書を発行してもらいます。
    • 経営力向上計画の策定: 経営力向上計画を作成します。この際、税理士や認定経営革新等支援機関のサポートを受けることも有効です。
    • 経営力向上計画の申請・認定: 所轄の主務大臣に計画を提出し、認定を受けます。
    • 設備取得・事業供用: 認定を受けた後、設備を取得し、事業の用に供します。例外的に取得後60日以内に申請することでも可。
    • 税務申告: 税務申告の際に、即時償却または税額控除を適用します。

    まとめ

    中小企業経営強化税制は、中小企業の設備投資を強力に後押しする非常に魅力的な制度です。即時償却と税額控除のどちらを選ぶかは、貴社の経営状況や今後の事業計画、株価対策などによって最適な選択が異なります。

    この制度をうまく活用することで、税負担を軽減し、手元の資金を有効活用して、さらなる経営力向上と事業拡大を目指しましょう。ご不明な点があれば、必ず税理士や専門機関に相談し、最新の情報を確認しながら手続きを進めることをお勧めします。

    【関連リンク】

    No.5434 中小企業経営強化税制(中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除)

    中小企業庁 経営力向上計画策定の手引き

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