✔ 今年赤字になった場合、来年に繰り越すことはできますか?
安心してください、平成30年4月1日以後に開始する事業年度において生じた欠損金(赤字)は10年間繰り超すことができます。欠損金の繰越制度といいます。
ただし、青色申告書を提出していることが要件です。赤字を法人税法上の欠損金に置き換えてみていきます。
欠損金の繰越控除の概要
欠損金の繰越控除とは、青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金を、当事業年度の所得金額の計算上、損金の額に算入することをいいます。
欠損金の繰越控除ができる法人は、欠損金の生じた事業年度で青色申告書を提出し、かつ、その後の各年度においても連続して確定申告書を提出している法人です。
これは、欠損が生じた年が青色申告で、その後は白色申告でも繰越控除の規定は適用されるということです。
繰越期間の変遷
今までも繰越控除の制度はありました。最近、何回か繰越できる期間の税制改正が行われています。
事業年度 | 繰越期間 |
---|---|
平成13年3月31日までに開始する事業年度 | 5年 |
平成13年4月1日から平成20年3月31日までに開始する事業年度 | 7年 |
平成20年4月1日から平成30年3月31日までに開始する事業年度 | 9年 |
平成30年4月1日以降開始する事業年度 | 10年 |
繰越しできる金額
中小法人(注1)は当年度の所得金額に対して100%控除することができます。
しかし、中小法人以外の法人は年度によって控除できる割合が決まっていて、全額控除することができません。
以下、繰越控除前の所得金額に対する控除できる割合
事業年度 | 控除できる割合 |
---|---|
平成24年4月1日から平成27年3月31日までに開始する事業年度 | 80% |
平成27年4月1日から平成28年3月31日までに開始する事業年度 | 65% |
平成28年4月1日から平成29年3月31日までに開始する事業年度 | 60% |
平成29年4月1日から平成30年3月31日までに開始する事業年度 | 55% |
平成30年4月1日以後開始する事業年度 | 50% |
(注1)中小法人等とは
① 普通法人のうち、資本金若しくは出資金のが鵜が1億円以下(100%子会社除く)又は、出資を有さないもの
② 公益法人等、協同組合等、人格のない社団等
100%子会社等とは
(イ)資本金若しくは出資金の額が5億円以上の法人または相互会社(以下大法人)による完全支配がある普通法人
(ロ)完全支配関係にある複数の大法人に発行済み株式等の全部を保有されている普通法人
繰越控除する順序
繰越欠損金が2以上の事業年度から生じたものが残って繰り越されている場合、古い年度分から控除することになっています。
✔ 具体的に説明してください。
以下設例で解説したいと思います。
設例
中小企業の設例
(設例1)中小企業で令和2年3月期に1,000,000円の欠損金控除前所得があるとします。過去の欠損金の残がどのように消えていくかを解説します。年度毎の残は以下のようになっています。
欠損発生年度 | 前期繰越額 | 当期控除額 | 翌期繰越額 |
---|---|---|---|
平成29年3月期 | 500,000円 | 500,000円 | 0円 |
平成30年3月期 | 700,000円 | 500,000円 | 200,000円 |
平成31年3月期 | 300,000円 | 0円 | 300,000円 |
令和2年3月期計 | 計1,000,000円 | 計500,000円 |
(解説)繰越欠損金は古い順に消していきます。よって、まず平成29年3月期の500,000円、次に平成30年3月期の700,000円の内500,000円を消します。残は200,000円です。平成31年3月期の300,000円はそのまま繰り越します。翌期への繰越計は500,000円です。
大企業の設例
(設例2)大会社の場合はどうなるでしょうか。先ほどの例を使います。
(解説)令和2年3月期における控除額は500,000円だけです。
欠損発生年度 | 前期繰越額 | 当期控除額 | 翌期繰越額 |
---|---|---|---|
平成29年3月期 | 500,000円 | 500,000円 | 0円 |
平成30年3月期 | 700,000円 | 0円 | 700,000円 |
平成31年3月期 | 300,000円 | 0円 | 300,000円 |
令和2年3月期計 | 計500,000円 | 計1,000,000円 |
令和2年3月期においては、繰越控除前1,000,000円に対して、控除できる割合は50%でした。よって、1,000,000円×50%=500,000円が控除できる額になります。翌期へ繰り越す額は1,000,000円です。
まとめ
青色申告書で確定申告している法人は当期の欠損金(赤字)を来年以降に繰り越すことができます。
令和2年においては10年間繰り越せます。
これは青色申告の大きな特典です。
特に、設立初年度は赤字になることも多いです。
とても有効な制度です。必ず利用したいところですね。
参考URL:国税庁タックスアンサーNo.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除