税理士法人 清水会計

繰延消費税額等の計算について

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繰延消費税額等とは、資産に係る控除対象外消費税のうち、その年度の損金として処理できない、つまり資産計上するときに使う科目です。

一旦資産として計上しますが、一定期間で償却します。

✔ 控除できない消費税とはどのようなものでしょうか?

まずは控除できない消費税について解説します。

目次

控除対象外消費税


税抜経理方式を採用している場合において、課税売上が5億円超又は課税売上割合が95%未満であるときは、

その課税期間の仕入控除税額は課税仕入れ等に係る消費税額全額ではなく、課税売上に対応する部分になります。

控除対象外消費税は、仕入税額控除ができなかった消費税等の額をいいます。

控除対象外消費税等=仮払消費税等×(1-課税売上割合)

(注)

課税売上割合=課税売上高(税抜)÷課税期間の総売上高(税抜)

・課税売上は、国内取引の課税取引と輸出売上の合計

・総売上高は、課税売上と非課税売上の合計

控除対象外消費税額等の経理処理


控除対象外消費税額等が資産に係るものか否かなどで損金になるか資産計上するのか分かれます。

以下、控除対象外消費税額の経理処理をまとめてみます。

発生区分 課税売上割合 項目 経理処理
資産でない 全額損金(但し交際費分一部損金不可)
資産である 80%以上 全額損金
80%未満 棚卸資産である 全額損金
一の資産の消費税額等が20万円未満 全額損金
これら以外 資産(繰延消費税額等)
取得価額に含める(※)

※損金を検討せずに、最初から取得価額に含めて減価償却することができます。

✔ 一時の損金にできない場合、どうやって償却していきますか?

繰延消費税額等の償却方法と損金算入限度額


固定資産に係る控除対象外消費税額等が20万円以上になると「繰延消費税額等」として、資産計上します。

記載する区分は「投資その他の資産」です。

繰延消費税額等の償却限度額=繰延消費税額等÷60×事業年度の月数

但し資産の取得年度のみ以下のようになります。

繰延消費税額等の償却限度額=繰延消費税額等÷60×事業年度の月数×1/2

損金にできる額は、上記の式で算出した金額の範囲内です。

設例


(前提)

課税売上 10,000(消費税1,000) 課税売上割合70%

課税仕入 11,000(消費税1,100)

うち、棚卸資産8,000(消費税800)、固定資産3,000(消費税300)

一括比例方式を採用している

単位:万円

(仕訳)

借方金額貸方金額
仮受消費税等1,000仮払消費税等1,100
租税公課240未払消費税等230
繰延消費税額等90
1,3301,330

取得年度の償却の仕訳

借方金額貸方金額
繰延消費税額等償却額9繰延消費税額等9

(解説)

① 控除対象外消費税額の計算

棚卸資産 800×(1-70%)=240 → 租税公課

固定資産 300×(1-70%)=90 → 繰延消費税額等

棚卸資産に係るものは全額損金、それ以外は繰延消費税額等(資産)となります。

固定資産に係る控除対象外消費税額等が20万円以上のため資産になります。

② 未払消費税等(消費税の納付額)の計算

納付額=1,000-(1,100×70%)=1,000-770=230

控除できる消費税額は1,100×70%で計算します。

よって控除できない消費税が1,100-770=330となります。

③ 繰延消費税額の償却計算

取得年度(1年目)であるので、

償却額=90÷60×12×1/2=9

2年目からは

償却費=90÷60×12=18

まとめ


繰延消費税額等がどのような場合に発生するか又、その経理処理、償却方法についてみてきました。

課税売上割合が80%未満の会社は固定資産の取得などした場合に、全額控除してしまわないように注意が必要です。

また、償却計算においても初年度は1/2をすることも要注意です。

そもそもですが、税込経理をしている会社は、消費税額等は資産の取得価額に含まれますので、今回の記事のような特別な処理はありません。

参考URL:国税庁タックスアンサー№6921 控除できなかった消費税額等の処理

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