役員退職金はオーナー会社であれば、自分自身で自由に決めることが可能です。
また、高額な役員退職金は会社の利益を減らし、法人税を節税したり、
会社の株価を押し下げる効果があるので、事業承継の観点からも検討されがちです。
しかし、過度に高額な役員退職金は課税の公平性の観点から、税務調査で否認される可能性があります。
それでは、役員退職金としてどのくらいが適正なのでしょうか?
この質問について解説していきます。
功績倍率を使うのが一般的です
役員退職金の計算で最も使われるのが功績倍率法です。
この方法1点で十分です。
功績倍率法の計算式
役員退職金の適正額=最終の役員報酬月額×役員の在任年数×功績倍率
例えば、社長の役員退職金として支給する場合
直近の報酬月額が100万円、在任年数30年、功績倍率3.0とします。
役員退職金=100万円×30×3.0=9,000万円
が、適正な退職金額となります。
絶対にこの額にしないといけないわけではありません。
少ない分には全然問題ありません。
多い場合は否認されるリスクがあります。
功績倍率について
では、功績倍率は何を基準に決めたらいいのか迷うと思います。
実務的には、昭和56年11月18日の東京高裁(その後最高裁でも支持)での過大役員退職金の判例が用いられます。
役職 | 社長 | 専務 | 平取締役 | 監査役 |
功績倍率 | 3.0 | 2.4 | 1.8 | 1.6 |
これらの数値も目安です。今から40年近く前の判例が今でも使われています。
ちなみに社長を経験した会長は2.5~3.0でいいでしょう。
功績倍率法の注意点
功績倍率法では、最終の役員報酬を計算で用いますが・・・
月額報酬を抑えて退職金で最後に取ろうと考えている社長は、形式的に否認されるリスクがあります。
もし、まとまった退職金を取ろうとすれば、月額報酬をあらかじめ上げておく必要があります。
退職直前で上げても否認されます
急に退職を決めて、退職金を多く取ろうとして役員報酬を上げたとします。
それを最後の月額報酬ということでそのまま計算したら法人税で否認されます。
やはり利益操作になります。
少なくとも1年前には上げておくべきと思います。(あくまで私見です)
まとめ
今回は、以前にお話しした役員退職金に関して、損金算入時期の続編として適正額についてお話ししました。
役員退職金は節税効果は大きいですが、その分、過度に高額な金額になりがちです。
過度に高額な役員退職金は税務調査で否認されるリスクがありますので、
安易に決めてしまうのではなく、適正な額はいくらになるかを正しく理解し、
上限のつもりで支給額を決めていかれたらと思います。
【参考記事】 役員退職金の税金を教えてください