税理士法人 清水会計

海外から機械を購入したとき、取得価額に含める諸費用・含めない費用

    はじめに

    海外から機械を購入した場合、本体価格だけでなく、日本の工場に据え付けて稼働させるまでにかかった費用の大半は機械の取得価額に含めて減価償却します。

    輸入取引では、国際運賃・海上保険・関税・通関手数料・港湾での保管料など、国内購入にはない付随費用が多く発生します。これらを支払時の経費として処理してしまうと、税務調査で取得価額への加算を指摘されることがあります。

    本記事では、法人税法上どの費用を取得価額に含めるのか、逆に含めなくてよい費用は何かを、輸入特有の論点(輸入消費税・外貨換算)も含めて整理します。

    取得価額の基本ルール

    購入した減価償却資産の取得価額は、法人税法施行令第54条第1項第1号により、次の合計額とされています。

    1. 購入代価(引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税その他購入のために要した費用を含む)
    2. その資産を事業の用に供するために直接要した費用

    つまり「買うためにかかった費用」と「使える状態にするためにかかった費用」の2つが取得価額を構成します。海外からの輸入でも、この枠組みは国内購入と同じです。違いは、1に該当する費用の種類と金額が大きくなる点にあります。

    取得価額に含める主な諸費用

    輸入機械で取得価額に含めるべき代表的な費用は次のとおりです。

    費用内容区分
    機械本体の代金インボイス価格(外貨建なら円換算後)購入代価
    輸出国内の運賃・梱包費売主工場から船積港までの国内輸送、輸出梱包購入代価
    国際運賃海上運賃・航空運賃購入代価(引取運賃)
    海上保険料・運送保険料貨物保険購入代価(運送保険料)
    荷役費船積み・荷揚げ・クレーン作業費購入代価(荷役費)
    関税輸入時に納付する関税(附帯税を除く)購入代価(関税)
    通関手数料通関業者(乙仲)への報酬、輸入申告関連費用購入のために要した費用
    港湾・保税倉庫の保管料通関待ちの間の保管料、ターミナル費用(THC等)購入のために要した費用
    輸入代行・仲介手数料商社・代理店への購入手数料購入代価(購入手数料)
    国内運賃港から自社工場までの輸送費購入代価(引取運賃)
    据付費・基礎工事費据付工事、機械の土台・アンカー工事事業供用のための費用
    試運転費試運転に要した材料費・人件費・外注費事業供用のための費用
    技術者派遣費用据付・調整のため来日した売主技術者の渡航費・滞在費・指導料事業供用のための費用

    取引条件(インコタームズ)で負担者が変わる

    国際運賃や保険料を誰が負担するかは、契約の取引条件で決まります。たとえば CIF 条件なら運賃・保険料は売主負担で本体価格に含まれており、FOB 条件なら買主が別途支払います。

    買主が別途支払った運賃・保険料は、請求書が本体と別でも取得価額に加算します。契約書とインボイスで取引条件を必ず確認してください。

    取得価額に含めないことができる費用・含めない費用

    次の費用は、取得に関連して支出しても取得価額に含めないことができる(または含めない)とされています。

    費用取扱い根拠
    借入金の利子使用開始前の期間分でも含めないことができる法基通7-3-1の2
    割賦購入の利息相当額契約で区分されていれば含めないことができる法基通7-3-2
    登録免許税その他登記・登録費用含めないことができる法基通7-3-3の2
    関税の延滞税・加算税等(附帯税)含めない(損金不算入)法令54条1項1号かっこ書、法法55条
    契約解除に伴う違約金(別の資産に買い替えた場合など)含めないことができる法基通7-3-3の2

    判断に迷いやすい費用

    • 機種選定のための海外視察旅費:購入の意思決定前の調査段階の費用は、一般的に取得価額に含めず損金処理とされることが多い一方、購入決定後の検収・立会いのための渡航費は含める方向で検討します。
    • 輸入後の保管料:通関待ちなど取得の過程で生じたものは含めますが、据付後に一時保管した場合などは実態に応じて判断します。
    • 為替差損益:決済時の為替差損益は取得価額を修正せず、営業外損益として処理します(詳細は後述)。

    輸入消費税の取扱い

    輸入時に税関へ納付する消費税・地方消費税(輸入消費税)は、経理方式によって取得価額への算入が変わります。

    • 税抜経理:輸入消費税は仮払消費税等として処理し、取得価額には含めません。
    • 税込経理:輸入消費税も取得価額に含めて減価償却します。

    輸入消費税は関税と同じ輸入許可通知書に記載されるため、関税と一緒に取得価額へ入れてしまう誤りが見られます。税抜経理の会社では、関税は取得価額、消費税は仮払消費税と分けて計上してください。

    なお、輸入消費税の課税標準は「関税課税価格(CIF価格)+関税+個別消費税」です。仕入税額控除には輸入許可通知書の保存が必要で、通関業者経由の書類も含め保管しておきましょう。

    外貨建取引の円換算

    外貨建てで機械を購入した場合、本体価格は原則として取引日の為替相場(TTM)で円換算します(法法61条の8第1項、法基通13の2-1-2)。継続適用を条件に、TTS や前月末・当月初の相場を使うこともできます。

    実務で押さえたいのは次の3点です。

    • 前渡金を支払っている場合:前渡金に対応する部分は、支払時に計上した前渡金の帳簿価額をそのまま取得価額とし、引渡日のレートで換算し直さないことができます(法基通13の2-1-5)。手付金・中間金を数回に分けて送金する機械取引では、送金ごとのレートが取得価額に積み上がります。
    • 為替予約をしている場合:取引前に為替予約で円換算額を確定させ、その旨を帳簿に記載していれば、予約レートによる円換算額で取得価額を計上できます(法法61条の8第2項)。
    • 決済時・期末の為替差損益:未払金を決済したときや期末換算で生じた為替差損益は、取得価額を修正せず損益として処理します(法基通13の2-1-9)。

    なお、関税・輸入消費税の課税価格は税関が公示する相場で換算されるため、会計上の本体価格の円換算額とは一致しないのが通常です。

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    実務上の注意点

    1. 少額資産・税制優遇の判定は付随費用込みの金額で

    少額減価償却資産や一括償却資産の判定、特別償却・税額控除の取得価額要件は、付随費用を含めた1台あたりの取得価額で判定します。本体価格だけで判定すると、要件の当てはめを誤ります。

    中小企業者等の少額減価償却資産の特例は、令和8年度改正で上限が30万円未満から40万円未満に引き上げられ、令和8年4月1日以後の取得資産から適用されています。年間合計300万円の上限は据え置きで、対象法人の従業員数要件は400人以下に縮小されました。

    2. 付随費用は後から請求が届く

    輸入取引では、通関業者の請求書や国内運送費、据付工事費が機械の到着後に分かれて届きます。決算期をまたぐと、付随費用だけ翌期の経費に入ってしまいがちです。購入案件ごとに費用を集約する補助科目(建設仮勘定など)を設けると漏れを防げます。

    3. 償却開始は「事業の用に供した日」

    輸入機械は、到着から据付・試運転を経て稼働するまで数か月かかることがあります。期末時点で稼働前であれば、支払額は建設仮勘定に計上し、減価償却は事業供用日から開始します。試運転が完了し本格稼働した日を、検収書や稼働記録で説明できるようにしておきましょう。

    4. 証憑の保存

    契約書(取引条件の確認)、インボイス、B/L、輸入許可通知書、通関業者の請求書、送金計算書(為替レートの確認)は、取得価額の内訳を説明する一式として保存してください。

    設例とまとめ

    設例:FOB条件で米国から機械を輸入(税抜経理)

    本体 USD100,000 のうち、USD30,000 を前渡金として1ドル140円で送金し、残額 USD70,000 は取引日のTTM 1ドル150円で換算したケースです。国内の費用はすべて税抜金額です。

    項目金額(円)取得価額
    本体(前渡金分)USD30,000 × 140円4,200,000含める
    本体(残額)USD70,000 × 150円10,500,000含める
    海上運賃350,000含める
    海上保険料50,000含める
    関税0含める(本例は無税品目)
    通関手数料80,000含める
    保税倉庫保管料40,000含める
    港から工場までの運賃250,000含める
    据付・基礎工事費900,000含める
    試運転費150,000含める
    売主技術者の渡航・滞在費600,000含める
    取得価額 合計17,120,000
    輸入消費税・地方消費税約1,510,000含めない(仮払消費税)
    購入資金の借入金利子120,000含めないことができる

    本体価格は1,470万円ですが、付随費用を加えた取得価額は1,712万円となり、約16%増えます。

    まとめ

    • 機械を「買って、運んで、通関して、据え付けて、動かす」までの費用は原則すべて取得価額に含めます。
    • 借入金利子、登録免許税、関税の附帯税などは取得価額から除くことができます(附帯税は除かなければなりません)。
    • 輸入消費税は税抜経理なら取得価額に含めず、関税と分けて処理します。
    • 外貨建ての本体価格は取引日レートで換算し、前渡金部分は支払時の帳簿価額を使えます。
    • 少額資産や税制優遇の判定は、付随費用込みの取得価額で行います。

    輸入機械の取得価額は、契約条件・通関書類・為替の3点を突き合わせて初めて確定します。判断に迷う費用がある場合は、購入前の段階で顧問税理士にご相談ください。

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