税理士法人 清水会計

【2025年版】株式譲渡所得の税率が変わる?高額所得者に影響する「ミニマムタックス」とは

    こんにちは。税理士の清水です。
    2025年から所得税に新しい仕組みが導入されるのをご存じでしょうか。
    それが「ミニマムタックス(高額所得者に対する最低税負担制度)」です。

    株式の譲渡益(キャピタルゲイン)や配当所得が大きい方を中心に、税率が実質的に引き上げられる可能性があります。
    今回は、この制度がどのように変わるのか、税率はどうなるのか、わかりやすく解説します。


    ■ 現在の株式譲渡所得の税率

    上場株式の譲渡益は、他の所得と分離して課税される「申告分離課税」の対象です。
    現在の税率は以下のとおりです。

    区分税率
    所得税15%
    復興特別所得税0.315%(所得税の2.1%)
    住民税5%
    合計20.315%

    つまり、これまで株式譲渡益には**一律20.315%**が課されていました。


    ■ 2025年から変わる「ミニマムタックス」とは

    2025年(令和7年)1月1日以降に生じる所得から、「ミニマムタックス(最低税負担制度)」が導入されます。

    これは、所得の種類を問わず一定以上の所得がある人に対して、最低限の税負担を求める仕組みです。

    <制度の概要>

    • 「基準所得金額」(給与所得・事業所得・株式譲渡所得・不動産譲渡所得など)を合算
    • そこから「特別控除額3億3,000万円」を控除
    • その残額に 22.5% の税率を乗じた金額が「最低税負担額」となります

    もし通常の所得税額がこの金額を下回る場合、その差額分を追加で納税する必要があります。
    つまり「いくら税制上有利な所得構成でも、最低限この水準の税負担はしてください」という考え方です。


    ■ なぜ導入されるのか

    株式の売却益や配当など、金融所得に対する税負担が低すぎるという指摘が背景にあります。
    特に超富裕層では、給与所得に比べて税負担率が低いケースが多く、「税の公平性」の観点から見直しが行われました。


    ■ 実際にどれくらい税率が上がるのか?

    一般的な投資家や中小企業オーナーには大きな影響はありません。
    ただし、所得が数億円規模に達する方は注意が必要です。

    • 所得が数億円以上の方 → 税負担率が約22~27%程度に上昇する可能性
    • 所得が30億円を超えるような超富裕層 → 最大で27.5%程度まで上がる見込み

    つまり、これまでの20.315%から約7%程度の増税となるケースもあります。


    ■ NISAや少額投資は対象外

    NISA口座で得た非課税の配当や譲渡益は、これまで通りミニマムタックスの対象外です。
    また、一定のエンジェル税制の適用を受けた投資所得なども除外されます。


    ■ 税理士が見る「実務上のポイント」

    1. 譲渡時期の確認が重要
       譲渡契約の締結日ではなく、株式の引渡日・決済完了日が課税時期判定の基準です。
    2. 所得の合計額を常に把握
       給与や事業所得、不動産譲渡益などと合算されるため、トータルで基準額を超えるかどうかを事前に試算しましょう。
    3. 納税資金の確保
       想定以上に税額が増える場合があります。特にM&Aや自社株譲渡など大口取引では、納税資金を先に確保しておくことが大切です。
    4. 事業承継スキームへの影響
       親族内承継やM&Aによる株式譲渡が2025年以降に行われる場合、スキーム設計の見直しが必要です。

    ■ まとめ:2025年以降の譲渡計画は早めの検討を

    2025年から始まるミニマムタックスは、一部の高額所得者に限定される制度ではありますが、
    株式譲渡や事業承継を控えている経営者の方には大きな影響を与えかねません。


    💡 税理士からのひとこと

    制度の狙いは「超高額所得者への公平な課税」ですが、実務では譲渡時期・所得構成・控除対象の判断などが複雑です。
    事業承継やM&Aをお考えの方は、ぜひ税理士にご相談ください。
    適切なタイミングとスキームを選ぶことで、税負担を最小限に抑えることが可能です。

    【関連URL】

    極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置

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